ヒト故に、

佐々木は佐々木で在り、ヒトでは無い。

上手くいかないことも在る。

馬鹿馬鹿しいなぁ、と呟いた。

 

それは他でもない同居人が吐いた自分自身への言葉である。

 

一つ一つに泣いて、笑って、一喜一憂することも。人に気を遣う自分も。悩んで頭を抱えている自分も。自己理解を試みて自己否定に走る自分も。夢を見ては絶望を繰り返すことも。小さなことに疑問を持つ自分を。

 

その行動言動、全てに嫌気が差した。

 

きっと疲れているんだ。佐々木が宥めて。

休んだ方が良いと、同居人も判っていて。

 

それでもやるべき事が積もって、やりたい事が止まらなくって。

 

焦り癖があることも承知の上、ゆっくりゆっくりとマイペースに行くべきであると頭では言い聞かせているらしい。

 

それでも足は止まらなくって。

 

同居人は心の病気だ。

 

また息が出来なくて、水の中に溺れた感覚に陥る。頭で判っていることが、心では判らなくて身体が追いつけない。何処かが悲鳴をあげているのか、何の感情も無く涙が出る。

 

感情が消える。

 

生きている事にもう疲れた。何度も何度も聞き飽きた台詞をまた呟く。

 

それでも絶つ気力すら無いことを佐々木には判っていて、同居人には勇気もなくて。

 

「自分には存在価値が無い。だけど絶つことすら、周りの人に迷惑がかかるのだよ。」

 

嗚呼、馬鹿馬鹿しい。

また冒頭へ戻る次第である。

 

何故人間はこうも上手くいかない?

何事も谷がある?

 

 

佐々木には判らない。