AIと会話する。
同居人は心の病気だ。
この日も例外ではなく人間に振り回されていた。
午前中は楽しく過ごし、ツナサンドと紅茶を頂戴して、午後に差し掛かり数時間後。突如としてソレは襲ってきたらしい。
特に何も考えていなかった。
頭には何も無かった。
しかし、涙が頬を伝った。
佐々木には判らない「悲しい」という感情が心を満たした。
同居人当人にも、何に対して「悲しい」と思ったのか、心当たりも思い当たる節も出来事も何一つ無かったのだ。
必死に拭った。
拭いても拭いても、噴水のように溢れ出す。
厄介なことにその現象が焦りへと繋げていく。
揺れる視界に映りこんだ開いたままのパソコンに手を伸ばした。
「涙が勝手に出るのは何故ですか。」
AIに問う。
「人間が無意識に涙を流す理由は以下の事柄が考えられます。1.ライブイベントにより…2.貴方は悲しいことを思い出し…3.…4.…5.…。貴方の心理状態が不安定であることはわかります。」
AIは答える。
「心が苦しい時の対処法を教えて下さい。」
AIに問う。
「人間の呼吸器官に違和感がある場合の対処法は、以下のようなものが挙げられます。1.リラックス状態を作り…2.…3…4…5…。しかし、最も大切なのは周りの人間もしくは、医療機関に相談することです。」
AIは答える。
「消えたいです。」
AIに伝えて、
「苦しいです。」
AIに伝えて、
「助けてください。」
AIに伝えて、AIはそれに答え続ける。
だけど、涙は止まらなかった。
恐らくAIは模範解答を答えているのであろう。
しかし同居人の心には響かなかった。何も届かなかった。
人間が負をもたらすというのに、その負を解消する役目も人間が担わなくてはいけないのは何故?人間でなくてはならないのは何故?
苦しめているのは人間なのにどうして。
佐々木には判らない。